EVM互換とはなにか メリットや代表的なブロックチェーンを解説
様々なブロックチェーンのよってdAppの開発が行われていますが、その中でもイーサリアムを中心としてEVM互換を持つブロックチェーンが中心的な存在となっています。
EVM互換は、異なるブロックチェーンでも移植や開発が可能になり、暗号資産の市場でも標準的な技術として活用されています。
今回は、EVM互換の概要やメリット、今後の動向について解説します。
EVM互換とは
EVMとは、Ethereum Virtual Machineの略称です。直訳するとイーサリアム仮想マシンとなり、スマートコントラクトを実行するために必要な環境のことを指します。
そしてEVM互換とは、イーサリアム上のdAppsなどを相互にやりとりができるようになることであり、互換性があることで幅広いプロジェクトへの活用や連携に役立ちます。
具体的には、イーサリアム上で開発されたdAppsをソラナやアバランチでコードを大幅に変更することなく実行したり、逆にEVM互換のあるブロックチェーンで開発されたdAppsをイーサリアム上で実行することが可能になります。
EVM互換のメリット
EVM互換性があることで開発や移植がしやすくなり、ユーザーも異なるブロックチェーンへ移行がしやすくなります。
ここではEVM互換のメリットについて詳しく見ていきましょう。
既存のdAppの移行がしやすい
近年では、dAppsを開発したら複数のブロックチェーンで利用することが一般的になっています。
例えば、代表的なDEXであるSushiSwapでは、イーサリアムの他にもArbitrum、Polygonなど複数のブロックチェーンに対応しています。
このようにEVM互換があるとイーサリアム上で動作しているdAppを他のブロックチェーンに移植することや、逆にソラナやアバランチなど他のブロックチェーンで開発されたdAppをイーサリアム上でも動作できるようにすることが用意になります。
クロスチェーンブリッジを行うことができる
EVM互換性があることで、イーサリアムやEVM互換のある他のブロックチェーンと仮想通貨を取引できるようになります。
一般的に異なるブロックチェーン同士では直接交換をすることができません。
理由として仮想通貨によってルールやコンセンサスアルゴリズムが異なるためであり、ブロックチェーン間の資産の移動などが課題となっていました。
対策として、クロスチェーンブリッジと呼ばれる異なるブロックチェーンを橋のようにつなげて利用する技術が開発されています。
EVM互換を持つブロックチェーンでもクロスチェーンブリッジを確立することができ、相互接続することで多様なアプリケーションやユーザーが利用できるようになっています。
イーサリアムの技術を利用し開発できる
現在数多くのブロックチェーンが利用されていますが、その中でもイーサリアムがdAppプラットフォームの中で中心的な存在を担っています。
ユーザーの数もイーサリアムが最大であり、開発者もEVMの環境に慣れている人が多いため業界の標準となっています。
そのため、EVMを採用することで技術者にとっても開発活動がしやすい環境を作ることができます。
EVM互換のデメリット
一方でEVM互換性があることでスケーラビリティ問題が発生することやプロジェクト開発に制限がかかってしまうこともあります。
ガスの制約
EVM互換性の最大のデメリットといえば、ガス代の制約です。
EVM互換によってイーサリアムを中心として、数多くのdAppが開発されており高いシェア率を占めています。
そのため多くのユーザーもEVM互換のあるサービスやプラットフォームに集まりますが、その弊害としてスケーラビリティ問題が生じています。
取引手数料の高騰や取引の遅延などが起こるスケーラビリティ問題への対策は、イーサリアムの大型アップデートやレイヤー2のブロックチェーンによって行われていますが、根本的な解決には至っていません。
そのためEVM互換を持つことでスケーラビリティ問題を抱えることが大きなデメリットとなります。
流動性が損なわれる可能性
EVM互換のようにマルチチェーンに展開することで流動性が低下する可能性があります。
マルチチェーンとは、シングルチェーンではなく異なるブロックチェーンで運用を可能にすることで、ユーザーを増やすことや流通高を増やすことができます。
しかしその一方で、イーサリアム以外のブロックチェーンの流動性が低いという問題があります。
流動性の低いトークンは、適正な価格での取引がしにくくなり、価格操作などの悪用に遭いやすく脆弱になってしまいます。
EVM互換を持つ代表的なブロックチェーン
EVM互換のあるブロックチェーンは100以上ありますが、その中でも代表的なブロックチェーンについて紹介します。
Binance Smart Chain(BSC)
BSCはバイナンスが開発した、スマートコントラクト機能を持ったL1のブロックチェーンです。
EVM互換性があり、イーサリアムとは基本的なシステムが似ているという特徴があります。
また高い処理能力を有しており、ブロックを3秒に1回生成することができ、ガス代や処理能力ともにイーサリアムよりも優れています。
代表的なプロジェクトして、イーサリアムで開発されたUniswapのシステムを流用し開発されたPancake Swapなどが有名です。
Arbitrum
ArbitrumはイーサリアムのL2のブロックチェーンであり、Arbitrum OneとArbitrum Novaという2種類のブロックチェーンが開発されています。
Arbitrum OneではNFTやDeFiをメインに利用されており、Arbitrum Novaではアプリやゲームなどに適しています。
そしてArbitrumもEVM互換性を持っており、イーサリアムで開発されたAaveやUniswapなども移植されており実際に利用することも可能です。
Polygon
Polygonもイーサリアムのブロックチェーンと並行して動作するL2です。
Polygonではイーサリアムのブロックチェーンの負担を軽減させるため、Plasmaチェーンという独立したチェーンを並行して実行します。
Plasmaチェーンの仕組みは、イーサリアムのルートチェーンにはデータのみを記録し、取引の検証や証明をサイドチェーンで行うことで安全性と高い処理能力を実現します。
EVM市場の今後の動向
現在EVMを採用するブロックチェーンは、仮想通貨の市場をほぼ独占している状態が続いています。
ブロックチェーンの預かり資産の表すTVL(Total value locked)は、以下の図のようになっています。
(引用:defillama)
DeFiに預けられた資産の約6割はイーサリアムが占めており、Tron,BSC,Arbitrumなど他のEVM互換を持つブロックチェーンも含めると9割以上になります。
このようにイーサリアムを中心としたシステムが続く限り、他のブロックチェーンもEVM互換に対応していくことが予想できます。
そして今後もDeFi以外にもNFTやゲーム、メタバースなどの市場拡大が見込まれており、EVM互換を持つブロックチェーンも拡大が継続することが期待されています。
まとめ
現在開発されているdAppやプラットフォームはEVM互換性を持っており、独占的な状態が続いています。
イーサリアムのシステムとの互換性のあるEVMを実装したブロックチェーンは今後も市場拡大を続けていくことが予想されています。
しかしEVMに対応していないブロックチェーンが劣っているわけではないため、メリットやデメリットをしっかりと理解して判断することが大事です。