イーサリアムの上海アップデートが市場に与える影響 今後の予定を解説

イーサリアムでは、大型アップデートプロジェクトであるイーサリアム2.0を進めています。
その中で2023年3月には、上海アップデートというステーキングの引き出しに関わる実装が行われました。
上海アップデートによって、NFTやDeFi、ステーキングの参加者などにどのような影響があるのでしょうか。
今回は、イーサリアムの上海アップデートの目的や内容、市場に与える影響について解説していきます。
イーサリアムの大型アップデート「シャンハイ」とは
2023年3月にイーサリアムは、「The Merge」以来の大型アップデートである上海アップデートを実装しました。
上海アップデートでは、約1600万のステーキングされたイーサリアムの引き出しが解除されます。
上海アップデートの目的
上海アップデートでは、イーサリアムが抱える問題への対処を目的としています。
その中でも最も大きな目的は、ステーキングされていたイーサリアムを引き出し可能にすることです。
2022年9月の大型アップデート「The Merge」では、イーサリアムのコンセンサスアルゴリズムをPoW(プルーフオブワーク)からPoS(プルーフオブステーク)に移行することが完了しました。
PoSへの移行によってイーサリアムでのステーキングが可能になりましたが、引き出しや終了させることはできず、全体の約13%のイーサリアムが蓄積された状態になっていました。
EIP-4895とは
イーサリアムの上海アップデートでは複数の機能が実装されていますが、EIP-4895によるステーキングに出金機能を導入することが最大の目玉といえます。
EIPとはイーサリアムの改善提案のことであり、EIP-4895の実装によってバリデーターはステーキングした32ETHを引き出し報酬を獲得できるようになります。
イーサリアムのバリデーターとは
イーサリアムのコンセンサスアルゴリズムは、大型アップデート「The Merge」以前にPoWを採用していました。
PoWでは、マイナー(採掘者)がマイニングをすることでトランザクションを検証していましたが、PoSではバリデーターがステーキングした額に比例してブロックを作成できる確率が高まる仕組みになっています。
イーサリアムではバリデーターとして参加するために32ETHのステーキングが義務付けられており、より多くのトークンをステーキングすることで報酬額も上がる仕組みです。
上海アップデートにより実装される機能
上海アップデートのEIP-4895以外の小規模な改善には、イーサリアムでの取引手数料に関することが主になります。
バリデーターのガス代削減
上海アップデートでは、「Warm COINBASE」という開発者やバリデーターがソフトウェアにアクセスするための手数料が削減される機能が追加されます。
これによりバリデーターの負担軽減だけでなく、トレーダーも失敗した際の取引手数料を払う必要がなくなります。
ガス使用量の上限を設定する
EIP-3860では、スマートコントラクトを開発するためのコードにガス使用量上限を設定します。
これによってトランザクションの高速化が実現しユーザーの快適性の向上が期待されています。
イーサリアムの上海アップデートによる影響
イーサリアムのステーキングに出金機能が実装されることで、様々な分野での活用が期待されています。
ステーキング参加の増加
イーサリアムのステーキングが引き出し可能になったことで、ステーキングを利用するユーザーがさらに増えることが期待できます。
cryptoquantより引用
イーサリアムのステーキングユーザーの57%はリキッドステーキングを利用しています。リキッドステーキングとは、ETHに対し1対1で発行されたデリバティブトークンを受け取りDeFiで運用できるシステムです。
イーサリアムはLSD(Liquid Staking Derivative)によって流動性を高めることに成功しており、引き出しが可能になったイーサリアムは売却されるよりも更に運用がされるという予想がされています。
DeFiやNFT市場の拡大
上海アップデートの完了によってDeFiやNFT市場が更に活発になることが予想されています。
2020年頃からDeFiやNFT、ステーブルコインなどのユーザーが増えており、その後の2021年にはイーサリアムの価格が大幅に上昇しています。
しかしイーサリアムの需要が高まるにつれてガス代も上昇し、ユーザーが離れてしまうという現状になっています。
2022年の大型アップデートのMergeや今回の上海アップデートによって、環境にやさしいコンセンサスや安全性の向上が実現しており、今後もシャーディングの実装などが控えています。
そのためイーサリアムの市場規模はDeFiやNFTなどを中心に大きく拡大していくことが予想されています。
ETF(上場投資信託)として承認される
イーサリアムが多くの国でETF(上場投資信託)として承認される可能性があります。
イーサリアムのETFは、2021年4月にカナダで初めて承認されており、他にもオーストラリアやスイスなど4か国でETFが運用されています。
しかし現状では、アメリカや日本など多くの国ではETFの承認はされていません。
仮想通貨であるイーサリアムはボラティリティが高く、スケーラビリティ問題などの解決されていない課題があると言われています。
そのため今回の上海アップデートによってステーキングでの引き出しが可能になり、イーサリアムの資産としての評価も向上することが考えられます。
イーサリアムがETFとして上場することで、仮想通貨の投資をしていなかった個人投資家も興味を示すようになり市場の拡大が期待できます。
イーサリアムの上海アップデート後の予定
イーサリアムは、2022年9月のThe Mergeと今回行われた上海アップデート以外にも多くのアップデートをする予定です。
上海アップデートはMergeと比較すると限定的な改善に留まりました。理由としてはステーキングされたイーサリアムの引き出しをできるだけ早く可能にするためだと言われています。
イーサリアムの共同創始者であるヴィタリック・ブテリン氏は、2020年12月から続いているイーサリアム2.0の大型アップデートの進展が、Merge完了後でも全体の55%しか完成していないと語っています。
イーサリアムは今後もthe Surge、the Verge、the Purge、the Splurgeと大型アップデートを継続していきます。
ここではイーサリアムのアップデートの予定や内容についてみていきましょう。
大型アップデートは「The Surge」とは
大型アップデート「The Merge」では、PoSへの移行など環境やガス代への改善が行われましたが、次回以降の大型アップデートではイーサリアムの性能面を向上させることを目的としています。
次回の大型アップデート「The Surge」では、シャーディングとロールアップの導入がされる予定です。
シャーディングの実装
シャーディングとは、トランザクションの検証をグループごとに分割して、並列処理するシステムのことです。
イーサリアムではネットワークを64の新しいチェーンであるシャードに分割することで、スケーラビリティ問題を解決することを目指しています。
シャーディングを実装する前では、バリデーターはネットワーク全体を検証する必要があり処理が重くなることやバリデーターになるためのハードルが高いことが問題でした。
シャーディングを実装することで、ネットワークを64のシャードに分割されます。
バリデーターは分割されたシャードを処理するため負荷が軽減され、分散化されるので安全で迅速な検証が期待されています。
大型アップデート「The Surge」の予定はいつなのか
次回のイーサリアムの大型アップデートである「The Surge」は2023年内を予定しています。
2022年9月にはMergeが行われましたが、これまで何度もアップデートの延期がされてきました。
遅延の理由としてはイーサリアム2.0へのアップデートは長期的に計画がされており、非常に複雑なため慎重に進めなくてはいけないためであると考えられています。
そのため次のSurgeでも、2023年内に予定通り行われるかはまだ確定していないというのが現状です。
まとめ
イーサリアムの上海アップデートは比較的小規模な実装に留まりました。
しかしステーキングの引き出しが可能になることで、自分の資産を管理し報酬を多くの分野で活用することができるようになりました。
年内にはシャーディングの実装も予定されているため、イーサリアムの市場規模は大きく拡大していくことが期待されています。