デジタル庁がweb3.0を推進する理由とは 国内での取り組みや今後の課題について解説
近年ではニュースなどでWeb3.0という言葉を耳にすることも多くなりました。
Web3.0は巨大なビジネス市場として注目されており、日本国内でも地方創生やエンターテインメントなどにおいてチャンスがあると期待されています。
今回は、日本国内でWeb3.0が推進されている理由や国内での活用事例、今後の課題について解説していきます。
Web3.0が日本で推進される理由
日本政府では、デジタル庁がWeb3.0研究会を発足するなど力を入れています。
なぜ日本国内では、Web3.0に対する期待感が高まっているのでしょうか。
まずビジネスモデルが大きな転換期に来ていることが挙げられます。2010年代あたりから
GAFAを中心とした巨大IT企業が影響力を高めてきました。
しかし今後はGAFAのようなビッグデータを活用する中央集権型のビジネスモデルから、分散型へとシフトしていく可能性が考えられます。
また資金調達や人材を集めることの多様化が可能になります。
DAOでは、ブロックチェーン上で資金調達をすることが簡単に行えるようになり、株主に依存することやコネクションがなくても多くの人が事業を立ち上げやすくなる可能性があります。
Web3.0とは
Web3.0は、ブロックチェーンやDApps、暗号通貨などの技術を活用した、分散化された透明性の高いWebのことを指します。
Web3.0は近年できたばかりの単語であるため、具体的な定義や考え方は様々でありますが、ブロックチェーン技術による非中央集権化という点では一致しています。
例えば、分散型自立組織であるDAOや芸術品やゲームなどのデジタル資産のトークン化をするNFTなどは、Web3.0と非常に関係性が高く構成されている要素のひとつでもあります。
Web2.0との違い
GAFAを中心としたデータを中央集権的に管理するシステムは、利便性が向上する一方でリスクが高いことも指摘されています。
Web2.0では、収集された個人情報や行動履歴を元に広告を出しています。
ユーザーのデータに基づいたサービスを提供することは便利ですが、情報操作が行われることや一部の企業のサービスにしかアクセスが制限されるような問題が生じる可能性があります。
また中央集権的な情報の管理では、ハッキングなどの不正アクセスが行われた場合に悪用されるリスクが生まれます。
Web2.0の利用では上記のようなリスクもあり、Web3.0によって問題が解決される可能性が高いです。
日本経済の低成長
1990年以降、日本経済は低成長が続いています。アメリカに次ぐ経済規模だった日本は、中国やインドに後れを取っており産業構造の変化が課題となっています。
日本の経済が停滞している要因として、人口減少、労働力の低下などがあり、また円安やエネルギー資源の高騰などでビジネス環境はますます厳しくなっている状況です。
そのため成長分野であるWeb3.0に注力することによって、既存のデジタル企業との競争力を上げる改革が求められています。
急速に拡大するWeb3.0市場
世界のWeb3.0市場は規模の拡大を続けていき、2030年には約815億ドルに達すると予想されています。
(引用:Emergen Research)
そのため、今後数年間の技術的な戦略や規制の枠組みなどによって、世界のWeb3.0市場の覇権争いに大きな影響を与えることになります。
日本では、2022年1月にweb3プロジェクトチームを設置して、デジタル経済圏の新たなフロンティアであるWeb3.0を推進することを国家戦略として位置づけています。
Web3.0に注力するためには人材の育成や呼び込み、資金供給などが必要です。
実際に日本政府では、スタートアップ企業の育成や、Web3.0に関する民間と連携した海外人材も活躍できる環境整備などを進めています。
日本国内で行われているWeb3.0の取り組み
日本国内でも政府や地方自治体、企業でWeb3.0による活用がされています。
開発途上にあるWeb3.0ですが、既に多くのプロジェクトが進められており注目が集まっています。
デジタル庁によるWeb3.0の推進
デジタル庁では令和5年度の予算案で、デジタル技術の専門家を中心に約200人を増員し、総勢で1,000人体制に拡大する方針を固めています。
その中でWeb3.0の促進策として研究開発や技術開発の担い手の育成に着手すべきだと考えられています。
日本政府では、2022年11月にスタートアップ育成5か年計画が発表され、計画の中にはブロックチェーン技術とWeb3.0の税制を含む環境整備が含まれています。
現在の日本国内には、高度な技術や専門知識を有する海外人材や日本のスタートアップ企業が不足しています。
Web3.0に関する環境整備や育成支援をし人材の交流機会を創出することで、多くの人材が活躍できる環境を作ることができます。
地方地域におけるWeb3.0の活用
Web3.0によって地方地域の活性化を目指す取り組みが話題になっています。
新潟県長岡市山古志地区は、人口800人で高齢化率が55%を超える小さな村です。
山古志地区では、2021年12月に特産品である錦鯉をNFTアートにしてデジタル住民票として発行しました。
山古志地区のNFTアートを購入した人は、地域のデジタル上の住民となりチャットで意見交換をすることや投票を行ったり地域づくりにも関与することができます。
このように特定の管理者ではなく参加者同士で管理することを分散型自立組織(DAO)といい、山古志地区ではDAO化を目指して活動しています。
錦鯉のNFTアートの購入者は、住民の800人を大きく上回り約10,000人に達するグローバルなデジタル住民がおり、山古志地区では知識やネットワークを活かして独自の自律的なコミュニティの形成を目指します。
Web3.0特化型のファンド
株式会社アカツキは、2022年5月に「Emoote(エムート)」というWeb3.0領域に特化したファンドを設立しています。
Emooteでは20以上の国内外のWeb3.0のプロジェクトにトークンで投資をしており、他にもNFTやメタバースなどのスタートアップ企業に対して積極的に投資を行っていく予定です。
日本国内には、多くの起業家やクリエイター、世界中で注目されるコンテンツがあります。
Emooteは海外での投資だけではなく、上記のような日本国内のWeb3.0領域のスタートアップ企業への投資やグロース投資をし、全面的に支援を行っています。
Web3.0が広く普及するための課題
Web3.0に対する投資額の減少
Web3.0という新しい技術の発展には、多くの企業への出資が必要になります。
しかしWeb3.0の新興企業に対するVC投資が減少傾向が続いています。
引用:Crunchbase
2023年第1四半期の投資額は17億ドルであり。、2022年第4四半期と比べて30%減少しています。また前年の第1四半期と比較すると91億円から約80%も減っています。
Web3.0は2020年から広く知られることになり多くの企業が開発に取り組んできましたが、今回の投資額は2020年以降で最低水準にまで落ち込んでいます。
投資額が低迷している理由として様々な要因があります。2022年には、Terraの暴落や大手仮想通貨取引所のFTXの破綻などの影響が強く、企業や投資家は仮想通貨やブロックチェーンに対する投資よりも現金化を優先させています。
不安定な経済状況を好転させるためには、セキュリティ対策の向上や関心が寄せられるセクターの開発などが求められます。
Web3.0の認知度の向上
Web3.0という言葉や意味を知らないという人も多く、利用方法や用途など認知度が低いという問題点があります。
ユーザーがWeb3.0を利用するためには、ブロックチェーンや仮想通貨に対する知識が必要になります。取引所やウォレットへの登録、管理など行わなければいけませんが、多くの人は理解が追い付いていないというのが現状です。
2022年11月に調査された電通のアンケート結果では、Web3.0の認知度は全体の約3割に留まっています。
10代の男性は約半数が認知していますが、特に女性や高齢者への認知度は低いという結果が判明しています。
またWeb3.0に対する不安は、理解不足やセキュリティ面、法制度の遅れなどが指摘されており、対策が求められます。
まとめ
Web3.0という新しい形のインターネットの仕組みは、私たちの身近なところでも活用されています。
Web3.0では既存の中央集権的なプラットフォームから新しいビジネスモデルへ変化させる可能性を秘めています。
日本国内でも政府が支援する動きをみせており、今後法整備によってスタートアップ企業がプロジェクトを立ち上げやすい環境に整うことが期待されます。