ブロックチェーンで地方創生をする可能性とは 導入事例や必要性を解説
ブロックチェーンと聞くと仮想通貨などの金融商品をイメージする人も多いかもしれません。
しかしブロックチェーンは、金融以外にも地方創生など身近な分野にも活用される可能性があります。
実際に地方自治体では、NFTによる地方創生やインフラの整備などに導入されている事例も報告されています。
今回は、ブロックチェーンで地方創生をするメリットや導入事例について紹介します。
地方創生が重要な理由とは
日本国内では、地域間格差や人口減少が問題となっています。
そのため新しい産業やビジネスによって雇用機会の創出や地域の魅力を多くの人に伝えることが必要とされています。
ここでは地方創生が重要な理由をみていきましょう。
地方自治体の人口減少問題
多くの地方自治体では止まらない人口減少が大きな課題となっています。
人口の増減には、人の移動による社会増減率と出生や死亡によって生じる自然増減率の2種類があります。
日本では2008年以降に人口減少が続いており、30年後には総人口が1億人を割ると言われています。
特に地方では若年層の人口が減少しており、一部の都市に人口が集中している格差が問題となっており対策が必要とされています。
地域の経済を活性化させる
地方の課題である人口減少の主な理由として、雇用機会の不足があります。
東京など一部の都市への一極集中は、企業や雇用が都市部に偏っていることも一因です。
そのため地方で新しい事業や産業が作られることで、人口減少に歯止めをかけられるのではないかと予想されています。
歴史のある文化財の維持が困難
地方には歴史のある文化財が数多く存在します。
しかし地方では、文化財の管理者の数が減っており維持が困難になることが増加しています。
文化財は老朽化すると補修などメンテナンスが欠かせないのですが、管理者や管理費用が足りないと有形無形の歴史的な文化財の数が減ってしまう恐れもあります。
地方自治体でブロックチェーンを活用するメリット
地方自治体とブロックチェーンやNFTなどのWeb3.0の技術は相性がいいと言われています。
ブロックチェーンを活用することで、地方自治体に以下のようなメリットがあります。
地域に関わる人を増加させる効果
ブロックチェーンによって地方創生を行うことで関係人口を増加させることが期待できます。
関係人口とは、定住者や観光客でもなく、過去に通勤や滞在したことがある人や、副業や祭り、イベントなどに参加し交流する人などを指します。
例えば、メタバース上やNFTのイベントが行われることで、地方と関わる人が増え関係人口の増加につながります。
行き来する人が増加することによって、地域経済の活性化や地方の労働力不足などの課題が解決される可能性があります。
国境を越えて地域のPRが可能
ブロックチェーンを活用することで、直接地方に旅行やビジネスで行き来しなくても、地方の文化やイベントに参加することが可能です。
これまでは、地方自治体を活性化させるために観光客を誘致することやイベントなどを開催することが行われていました。
しかし欠点として地方自治体はアクセスが都心と比較して良くないため、国内の遠距離から来る人や海外からの観光客が気軽に足を運びにくいという現状がありました。
ブロックチェーンを用いた地方創生では、デジタル住民票やNFTなど直接地方に来ることができない人にもアピールすることや参加することが可能になっています。
地方創生におけるブロックチェーンの活用事例
ブロックチェーンがどのようなビジネスモデルに使われるか、イメージできないという人も多いと思います。
ここでは、具体的な導入事例や実験を行っているケースを紹介します。
デジタル住民票NFT(山形県西川町)
山形県西川町では、NFTマーケットプレイス「HEXA」でデジタル住民票NFTを発行するという試みが行われています。
西川町のデジタル住民票NFTは1,000個限定で1個1,000円で抽選販売され、合計で1万3,440個の購入申し込みがありました。
西川町の人口は約4732人なので、総人口の2.8倍もの申し込み数となり大きな注目を集めています。
デジタル住民票の特典
デジタル住民票を保有することで、西川町のデジタル住民になることができます。
デジタル住民であることはNFTによって証明でき、デジタル住民になることで西川町を応援でき、町を盛り上げることや価値を高めることにつながります。
次にオンラインコミュニティに参加することで、西川町のイベントや特典情報、町長からのメッセージや投票やコメントによって地域復興の事業に参加することも出来ます。
そして、西川町を実際に訪れることで、温泉の入浴無料や自然水のプレゼントなどの特典が付与されます。
e-加賀市民制度(石川県加賀市)
e-加賀市民制度とは、電子市民であるe-加賀市民に加賀市の行政サービスを提供することで、関係人口を増加させることを目的とした取り組みです。
加賀市は温泉などの観光資源に恵まれている一方で、人口減少が進んでいることが問題となっており、平成26年には消滅可能性都市として取り上げられています。
そこで加賀市では、ブロックチェーン都市宣言を行い、NFTなどWeb3.0技術を導入した地方創生事業に取り組んでいます。
移住や定住につなげる目的
e-加賀市民になることで、オリジナルNFTの取得やドローンによる物流サービス、選挙の電子投票、アプリによる医療健康情報の確認、空き家や旅館を活用したワーケーションなど先端的なまちづくりを体験することができます。
このようにスマートシティ化を実現することで、移住や定住など関係人口を増加させることを目的としています。
環境価値の電子証書化(佐賀県佐賀市)
佐賀市では、ゴミ発電電力による環境価値の電子証書化に成功しています。
日本は、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを目標にしており、佐賀市でも資源循環、炭素循環など資源を有効活用し、環境や社会を良くするという取り組みが行われています。
ブロックチェーンでは改ざんが検出できる
佐賀市は、市内の清掃工場で生み出される再生可能エネルギーの発電データと、公共施設の再生可能エネルギーの利用実績をリアルタイムでブロックチェーンに記録しています。
ブロックチェーンはネットワークの参加者全員がデータを共有しています。そのため改竄をすると容易に検出がされるため、信頼性の高いデータが保証されます。
美しい村DAO
美しい村DAOとは、地方創生をDAOで行う事業であり「日本で最も美しい村」連合に加盟する61の町村地域の中の2自治体、鳥取県智頭町と静岡県松崎町で取り組みが行われています。
主要な取り組みとして、デジタル村民証になるNFTの発行や村の魅力的な体験をできる権利をNFTにして購入できる仕組みにして運営しています。
参加する自治体が増えるにつれデジタル村民特典も増えていく予定
美しい村DAOでデジタル村民証を購入することで以下のような特典が付与されます。
鳥取県智頭町では、民泊の利用料が半額になることや国指定重要文化財「石谷家住宅」への入場料無料が特典となっており、静岡県松崎町は、温泉施設の入場料割引や町営観光施設「伊豆の長八美術館」「重要文化財岩科学校」への入場料が無料になります。
2023年時点では2自治体だけの参加となっていますが、今後多くの地域が参加することで注目度も上がり、地方の活性化や関係人口の増加に繋がることが期待されています。
ブロックチェーンを導入して地方創生をする際の注意点
多くの地方自治体でブロックチェーンを活かしたビジネスモデルが出てきていますが、失敗に終わる事例も多いです。
理由の一つとして、イベントの盛り上がりが一過性であり関係人口が蓄積されないという点があります。
地方創生のイベントとして継続的に活性化させるためには、関係者のノウハウや情報伝達の仕方、地方企業などの牽引する存在が必要になります。
上記の問題はデジタル化だけでは解決しない場合が多く、地方創生には多くの関係者の知識や協力が必要だということが分かります。
まとめ
今回は、ブロックチェーンを地方に取り入れるメリットや導入事例を解説しました。
ブロックチェーンの活用方法は、NFTの販売からインフラや行政サービスまで多岐にわたります。
現在は、一部の地域の地方創生に活用されるに留まっていますが、今後は私たちの身近でも行政システムや電子投票などに導入される可能性が考えられます。