暗号資産におけるカストディの重要性とは メリットや規制について解説

仮想通貨のカストディ業務という言葉を聞いたことがない人も多いかもしれません。
仮想通貨の取引を始めたばかりの人は、管理や保管を仮想通貨取引所に任せている人が大半だと思います。
しかしFTXやマウントゴックスなど、取引所の資産流出事件が増えており、安全な資産管理方法が注目されています。
今回は仮想通貨におけるカストディ業務の重要性や種類、規制について解説をします。
仮想通貨におけるカストディとは何か
カストディ(Custody)とは、仮想通貨の保管や管理を専門的に行うサービスです。
元々証券会社や金融機関に関する用語として使われることが主でしたが、最近では仮想通貨市場の拡大によってカストディ業務が注目を集めています。
ここではカストディの定義や仮想通貨取引所との違いなどをみていきましょう。
カストディの定義
仮想通貨におけるカストディの定義は、他人のために仮想通貨を管理することです。
主にウォレットと呼ばれる仮想通貨を管理・保管するサービスを提供することをカストディ業務といいます。
また上記のような仮想通貨の管理を行う業者のことをカストディアンと呼びます。
カストディサービスは、オンラインでのウォレットの管理やコールドウォレットでの管理、マルチシグウォレットなどを組み合わせて安全な資産管理を行います。
仮想通貨におけるカストディの重要性
仮想通貨を取引する上でカストディはなぜ注目されているのでしょうか。
カストディの最も重要な点は、セキュリティの確保にあります。
仮想通貨の取引をはじめたばかりの投資家の多くは、購入した仮想通貨をそのまま取引所に保管していることが多いです。
しかしFTX事件のように仮想通貨取引所はハッキングされる事件も多く、取引所での保管は必ずしも安全であるとは限りません。
2014年にはMt.Goxが、約4億ドルの仮想通貨を流出し14,000人以上の被害者を出しています。
2018年には国内取引所のコインチェックが、ハッキングによって5,000万ドル以上を流出し金融庁も仮想通貨交換業者への監督・規制の強化を進めています。
またFTXは2022年に累計で4億ドル以上のハッキング被害を出し、多くの顧客は資産を引き出せていません。
上記の事件のように、仮想通貨取引所に管理を任せているとハッキングによって資産を失う可能性もあります。
そのためウォレットを用意して管理することの重要性や、仮想通貨市場にカストディサービスが増加することが注目されています。
<h3>仮想通貨取引所とカストディとの違い</h3>
仮想通貨の取引所とカストディは同じではありません。
取引所では、仮想通貨の売買や他の銘柄との交換の他に、カストディ業務である他人のために仮想通貨の管理を行うことが含まれています。
一方でカストディとは、仮想通貨の管理・保管をすることであり、仮想通貨取引所以外でも自分自身でカストディを行うことやカストディ業務専門のサービスなども存在します。
つまり仮想通貨取引所ではカストディが業務の一部に含まれており、必ずしも取引所でカストディ業務を利用する必要はありません。
カストディ業務の分類
カストディ業務には、大きく分けて取引所などに任せる場合と投資家自身で管理する方法があります。
仮想通貨取引所でのカストディ
取引所によるカストディは、顧客が仮想通貨を取引所で購入して、そのまま取引所に預け入れて管理してもらう方法です。
半数以上の国内投資家は、ウォレットなどの利用経験はなく取引所で保管している人が多いです。
取引所のメリットは、投資家が別のウォレットを用意する必要がないという点です。
取引所では、カストディサービスを用意しているので顧客は取引をするだけでよく利便性が高い特徴があります。
しかし取引所に依存をするため、倒産や業績の悪化によって資産が引き出せなくなるというリスクもあります。
セルフカストディ
セルフカストディは、仮想通貨を購入した後に自分でウォレットを用意して保管・管理を行う方法です。
セルフカストディには、オンライン上のアプリで管理するホットウォレットと、オフラインのUSB媒体や紙媒体で管理するコールドウォレットに分類されます。
Metamaskなどのホットウォレットは、オンライン上で管理されているため異なるプラットフォームへの移動が容易であることや取引のスピードが速いことが特徴ですが、ハッキングされる可能性があるためセキュリティ面に注意する必要があります。
コールドウォレットは、オフラインで保管されているため、ハッキングや会社の倒産などの影響を受けないです。
しかしセルフカストディは投資家自身が秘密鍵などを管理しなければならないため、紛失やパスワードを忘れることなど手間が増えることに注意しましょう。
セルフカストディのメリット
セルフカストディでは、カウンターパーティリスクによる資産の流出がなくなります。
カウンターパーティリスクとは、取引相手の信用リスクのことであり、仮想通貨取引所が債務不履行になったりハッキングによって資産流出して損失が発生することなどがあります。
中央集権的なシステムの仮想通貨取引所は、利便性が高い一方でハッキングなどの流出被害が過去何度も起きています。
そのため、セルフカストディやDeFi(分散型金融)を活用することでカウンターパーティリスクをなくすことができます。
セルフカストディのデメリット
セルフカストディによる管理では、紛失などのリスクに注意する必要があります。
取引所や専門のカストディ業者では、秘密鍵や資産の管理を任せられますが、セルフカストディではウォレットをなくすことやパスワード、秘密鍵を忘れるという紛失リスクが問題視されています。
ウォレットがなくなるリスクは珍しいことではなく、ビットコインの約20%は秘密鍵の紛失によって利用ができなくなっていると言われています。
実際に紛失してしまった場合には、投資家自身が責任を負うことになります。
またコールドウォレットでの管理は手間がかかります。
取引所やホットウォレットはオンライン上で即時に取引ができるため利便性が高いですが、ハードウェアウォレットは取引をするまでに時間がかかることがデメリットといえます。
カストディの規制について
金融庁では、仮想通貨取引所の資産流出事件の増加によってカストディ業務の規制を強化しています。
仮想通貨は、サイバー攻撃以外にもテロ資金やマネーロンダリングなど悪用されるリスクが多くあります。
ここでは仮想通貨のカストディ業務でどのような規制がされているのかをみていきましょう。
仮想通貨の分別管理
(引用:bitpoint)
カストディ業務では、顧客の資産と自社の資産と別々に分けて管理しなければいけません。
分別管理は仮想通貨の流出リスクを軽減させ、顧客を保護することにも繋がります。
具体的には、秘密鍵のような仮想通貨を移転させるために必要な情報をコールドウォレットや、同等の安全管理措置を講じて管理することが定められています。
しかし利便性の向上のため、顧客の仮想通貨全体の5%を上限に、ホットウォレット等による管理も認められています。
犯罪やマネーロンダリングの防止
カストディ業務を行う会社では、金融犯罪やマネーロンダリングを防ぐために金融機関などと同等の義務を負います。
犯罪収益移転防止法では、顧客の本人確認や記録の保存、取引記録の作成や保存、怪しい取引があった場合には金融庁へ届け出ることなどが定められています。
また日本政府ではマネーロンダリング対策として、顧客の情報を企業間で共有して金融機関と同水準で犯罪者の資金移動を追跡できる、送金ルールを2023年春にも導入する予定です。
今回の送金ルールはロシアなどの制裁対象国への送受金を防ぐことも目的としています。
まとめ
仮想通貨のおけるカストディ業務とは秘密鍵を管理・保管することです。
近年では、仮想通貨だけでなくNFTのようなデジタル資産を保有する投資家も増えておりより安全な保管方法が求められています。
そのため、取引での保管以外にもコールドウォレットを用意して分別管理することなど使い分けることが重要になります。
セルフカストディは手間がかかる一方で、資産を分散させることや安全な資産管理を行うことができるため活用を検討してみてください。