リキッドステーキングの市場が拡大する背景やイーサリアムとの関連性を解説

2023年に入り、DeFiサービスの中でもイーサリアムによるリキッドステーキング(Liquid Staking)の市場が急速に成長しています。
ステーキングの派生であるリキッドステーキングでは、トークンをロック中にもレンディングなどの他のDeFiサービスで報酬を得られるチャンスが生まれます。
リキッドステーキングを活用することで効率的に稼ぐことができる一方で、レバレッジと似たような効果があるためリスクにも注意する必要があります。
今回はリキッドステーキングの市場が成長している背景とメリットや危険性について解説します。
リキッドステーキングの市場が拡大する背景
流動性を保ったまま仮想通貨をロックして報酬を得られるリキッドステーキングが注目を集めています。
リキッドステーキングの市場規模は、DeFiのプロトコルに預けられた資金量を表すTotal value locked(TVL)では、2023年4月時点で約162億ドルとなっています。
同じDeFiサービスであるレンディングのTVLは、約146億ドルなのでリキッドステーキングはレンディングを上回る市場規模に成長していることが分かります。
引用:DeFi Llama
注目がされている背景には、イーサリアムの大型アップグレードや仮想通貨市場の動向の変化など様々な要因が関係しています。
ここではリキッドステーキングが市場拡大を続けている要因や仕組みについてみていきましょう。
リキッドステーキングの仕組み
リキッドステーキングのliquidとは流動性という意味であり、文字通り流動性のあるステーキングができます。
これまでのステーキングでは、仮想通貨を預け入れてロックされている期間中には他のサービスに活用することができませんでした。
リキッドステーキングでは、専用の取引所に預け入れることでリキッドステーキングトークンを受け取り、ロック中にも受け取ったトークンで他のサービスを利用することが可能です。
例えばイールドファーミングやレンディング、ステーブルコインの担保など、多くのDeFiサービスを使いステーキング報酬とは別に稼ぐこともできます。
<h3>イーサリアムの上海アップグレード</h3>
イーサリアムは、2023年3月に上海アップグレードを実施しました。
上海アップグレードでは、32ETHずつステーキングされたイーサリアムの出金が可能になっています。
3月時点でロックされていたイーサリアムの蓄積量は約1,738万ETHであり、全体の約14%に当たります。
上海アップグレード前には、ステーキングされたETHがロックされているために報酬を得ることができませんでしたが、リキッドステーキングを活用することで資本を効率よく運用できます。
そのためイーサリアムを中心にリキッドステーキングの市場が急速に成長したと考えられます。
リキッド ステーキング デリバティブ (LSD)市場の成長
リキッドステーキングデリバティブ(LSD)の中でも、特にイーサリアムはDeFi市場で注目されています。
LSDの市場でシェアトップであるLido(Lido Finance)は約589万ETHを保有しており、全体の約74%を占めています。
引用:DeFi Llama
Lidoでは、ETHを預け入れることで発行されるデリバティブトークンであるstETHを使い、MakerDAOやAAVE、Uniswapなど多くのDiFiサービスを利用できます。
Lidoが急成長をしている要因としては、2022年から続いている仮想通貨全体の暴落があげられます。
多くの仮想通貨を保有し続けていても下落してしまうため、投資家がステーキングやDeFiサービスを活用することで資金を増やすという運用方法に転換をしています。
上記の図のように、2022年からビットコインは低迷を続けていますがRidoは高騰を続けていることが分かります。
2023年以降も、ビットコインなどの主要な仮想通貨の銘柄が下落相場である場合には、リキッドステーキングの市場は益々活気づいてステーキング量が増加することが予想できます。
リキッドステーキングのメリット
リキッドステーキングは、ステーキングの報酬を得られるだけでなく幅広い投資の選択肢が増えることになります。
リキッドステーキングにはどのようなメリットがあるかみていきましょう。
流動性の向上
リキッドステーキングでは流動性の向上が期待できます。
通常、ステーキングは預け入れている期間中にはロックされており何もできませんでした。
しかしリキッドステーキングでは、ステーキングを行いつつデリバティブトークンで他のDeFi関連サービスを活用可能です。
そのためDeFi市場全体の流動性の向上につながり、活性することで好循環が生まれるというメリットがあります。
幅広いDiFiサービスに投資できる
リキッドステーキングは、多くのDeFiサービスで報酬を得られる機会を生むことができます。
Lidoでは、リキッドステーキングにより104種類のDiFiサービスを利用可能です。
レンディングサービスのAAVEやDEX(分散型取引所)のUniswap、SushiSwap、Curve、ウォレットのmetamaskなど人気のあるアプリケーションが揃っています。
今までは、ステーキングかレンディングやDEXなど他のDiFiサービスのどちらかを選ばなければいけませんでした。
しかしリキッドステーキングでは、ステーキング中にも多くのDeFi関連サービスを活用して報酬を得られるチャンスが増えました。
リキッドステーキングのリスク
ステーキング中に様々なトレードや投資を行えるリキッドステーキングは、便利である一方でリスクも増加するという指摘があります。
価格変動やハッキング、プロトコルの変更などのリスクを正しく理解することで、投資での失敗を減らすことができます。
価格変動によるリスク
リキッドステーキングでは、一般的なステーキングよりもボラティリティリスクが増加します。
得られる報酬は、ステーキングしたトークンの価格や投資をしたトークンやサービスによって変わります。
例えば、ETHをリキッドステーキングしてstETHを活用する時には、ステーキング中にETHやstETHが下落すると価値が下がってしまい、またstETHでUniswapを利用した際にUniswapが下落すれば更に価値は下がることになります。
このようにリキッドステーキングはリスクも2重になるという点にも注意しなければいけません。
イーサリアムのプロトコルが変更される可能性
イーサリアムのプロトコルが変わることで報酬が減少する可能性もあります。
現在イーサリアムは大型アップグレードを行っている最中であり、今度新機能の追加や改善などが行われていく過程でプロトコルの変更があるかもしれません。
実際にイーサリアムがPoWからPoSに移行する過程では、マイニングの報酬額が減額されています。
そのためリキッドステーキングも、イーサリアムの必要量などの増加によって報酬の分配割合が変化することが考えられます。
ステーキングプールが攻撃を受けることも
DeFiのサービスであるリキッドステーキングは常にハッキングのリスクがあります。
多くのDeFiサービスはセキュリティ関連の技術的な対策を行っていますが、攻撃を受ける可能性がなくなることはなく、ハッキングの被害数は増加傾向にあります。
リキッドステーキングでもスマートコントラクトがハッキングを受けることで、預けた仮想通貨を失う可能性があります。DeFiのサービスは原則として自己責任であるため、ハッキング被害に遭っても補償が約束されているわけではないのです。
特にリキッドステーキングは新しいサービスであるため、脆弱性などをつかれる攻撃を受けることも考えられるため、ハッキングのリスクを常に意識して利用する必要があります。
まとめ
リキッドステーキングの市場はイーサリアムだけでなく、ソラナやポリゴンなど他の仮想通貨でも拡大を続けています。
2023年4月時点では、リキッドステーキングはDiFi市場でDEXに次ぐ規模にまで成長しています。
今後日本でも市場が拡大すれば、ステーキングのように多くの取引所などで利用できる身近なサービスになるかもしれません。