2022年5月仮想通貨暴落の理由は?Terra(LUNA)とTerraUSD(UST)との関連性をくわしく解説

仮想通貨市場は5月12日に大幅に下落し、ビットコインだけでなくDeFiやNFTなど幅広い銘柄が影響を受けています。同じタイミングでステーブルコインのTerraUSD(UST)も暴落し、担保となるTerra(LUNA)が99%安になり大きな衝撃を与えました。
今回は仮想通貨全体が暴落した理由やTerraUSD(UST)とTerra(LUNA)の特徴や関係性について解説します。
仮想通貨全体の暴落の背景 なにがきっかけ?
引用:Trading View
5月の上旬から仮想通貨の下落が続いています。
5月12日にBTCの市場は始値3万1,000ドルから一時2万5,000ドルまで値を下げました。暴落の流れはBTC以外のDeFiやNFT関連銘柄にも影響しており、仮想通貨全体の暴落に繋がりました。
ここでは仮想通貨全体の暴落に繋がったきっかけや影響などをみていきましょう。
TerraUSD(UST)の暴落をきっかけに仮想通貨全体が落ち込む
引用:Trading View
今回の暴落の直接的な原因は、
米ドルに連動するステーブルコインのTerraUSD(UST)の価格維持が崩壊したことと言われています。
ステーブルコインであるTerraUSD(UST)では1UST=1米ドルで取引が行われていましたが、5月の上旬から大量の引き出しが続き、米ドルとの連動性が崩れてしまい1UST=10セントまで下落しました。
TerraUSD(UST)は、2022年4月の時点でTether(USDT)やUSD Coin(USDC)に次ぐ3位で、ステーブルコインの供給量全体の約10%を占めている人気銘柄です。
時価総額でも上位に位置するTerraUSD(UST)の暴落は仮想通貨全体に広がり、BTCをはじめアルトコインのETHやUSTと同じ分散型金融であるDefi関連銘柄なども下落しています。
安全資産と言われていたステーブルコインの暴落
TerraUSD(UST)などのステーブルコインは安全資産として活用されています。
一般的に仮想通貨は価格変動の波が激しいことが特徴のひとつですが、ステーブルコインは法定通貨などと価値を連動させることで価格を安定させることができます。そのため低リスクの運用を好む投資家や一時的に資産を休ませたい場合などに重宝されていました。
しかし今回のTerraUSD(UST)の急落によりテラの関連銘柄だけでなく、ステーブルコイン全体の安定性や信用性を不安視する動きが強まっています。
暴落の原因となったTerraUSD(UST)とTerra(LUNA)の仕組み
仮想通貨全体の暴落のきっかけとなったTerraUSD(UST)やTerra(LUNA)にはどのような関係性があるのでしょうか。ステーブルコインには法定通貨や仮想通貨を担保する仕組み以外にもアルゴリズムによって価格を安定させる無担保型の仕組みも存在します。
ここではTerraUSD(UST)とTerra(LUNA)の特徴や仕組みについて解説をします。
TerraUSD(UST)とは
通貨名称 | TerraUSD |
シンボル | UST |
価格(2022年5月27日現在) | 0.0043ドル |
時価総額(2021年5月27日現在) | 498,286,336ドル |
時価総額ランキング(2021年5月27日現在) | 102 |
取扱取引所 | Binance、Bybitなど (国内取引所では取り扱っていない) |
TerraUSD(UST)は韓国のTerraform Labsが2018年から発行している仮想通貨で、アメリカドルの価格にペッグしているステーブルコインの一種です。
一般的にステーブルコインは価格変動が少ないため、リスクヘッジをしたい場合や下落相場に備えたい場合などに利用されます。価格が安定しているため、他のステーブルコインであるTether(USDT)やBinanceUSD(BUSD)、Dai(DAI)なども時価総額ランキングの上位に入っており、USTも一時は時価総額で3位に位置していました。
TerraUSD(UST)の特徴
TerraUSD(UST)はステーブルコインの主流となっている法定通貨担保型ではなく、アルゴリズムによって調整する無担保型に分類されます。ここではTerraUSD(UST)の特徴について詳しくみていきましょう。
無担保型(アルゴリズム型)のステーブルコイン
USTの最大の特徴は無担保型(アルゴリズム型)のステーブルコインに分類されることです。ステーブルコインは通貨によって仕組みが異なっており、大きく分けると3種類に分類することができます。
- 日本円やドルなど既存の法定通貨を担保にする法定通貨担保型
- イーサリアムなどの仮想通貨を担保にする仮想通貨担保型
- 通貨を担保にはせず、アルゴリズムによって供給量を調整する無担保型
ステーブルコインの種類は、Tether(USDT)などのドルを担保する法定通貨型が主流ですが、USTではTerra(LUNA)と連動する仕組みで価格を安定させる無担保型を採用しています。
無担保型はアルゴリズムを使用するため透明性が高く、担保が必要ないため資金効率が良いことが特徴といえます。
ブリッジ機能で多くのブロックチェーンで活用できる
USTではブリッジ機能によって異なるブロックチェーンでも送金などの資金移動を行うことができます。ブリッジ機能とは、異なるブロックチェーン間でも暗号資産を利用できるようにするシステムのことです。
2022年5月現在では、イーサリアム以外に、アバランチ、コスモス、ポリゴン、ソラナなどのブロックチェーンに対応しています。
非中央集権的である
USTは他のステーブルコインと比較して非中央集権的な特徴があります。
代表的なステーブルコインであるTether(USDT)では、テザー社が発行や担保されている法定通貨の管理をしているため、どうしても中央集権的なシステムになってしまいます。企業に依存した運営方針だと倒産や経営状況に左右されるため、非中央集権的なシステムはリスクを回避できるメリットがあります。
Terra(LUNA)とは
通貨名称 | Terra(LUNA) |
シンボル | LUNA |
価格(2022年5月27日現在) | 0.000144ドル |
時価総額(2021年5月27日現在) | 926,490,000ドル |
時価総額ランキング(2021年5月27日現在) | 213 |
取扱取引所 | Binance、Bybit、Kucoinなど (国内取引所では取り扱っていない) |
Terra(LUNA)はTerraプロジェクトで用いられるガバナンストークンのことです。
Terraプロジェクトでは、アメリカドルに連動するTerra USDや韓国ウォンのTerra KRW、モンゴルトゥグルグのTerra MNTなどのステーブルコインの安定やプロジェクトの方針を決める際に使用されます。
Terraが発行しているUSTなどのステーブルコインが発行されると、LUNAがバーンされ流通量が下がる仕組みになっています。
そのためTerraのステーブルコインの人気に連動してLUNAの需要も高まり、一時は時価総額も上位10位以内に入るほどの人気銘柄となっていました。
仮想通貨全体の暴落に繋がったTerraUSD(UST)崩壊の理由とは?
価格変動が小さく安全だといわれていたステーブルコインのTerraUSD(UST)はなぜ崩壊してしまったのでしょうか。
担保資産であるTerra(LUNA)は2022年4月時点で100ドルに達していましたが、現在では0.00014ドルと99%以上の歴史的な大暴落が発生しました。
ここではTerra(LUNA)とTerraUSD(UST)の暴落の流れや関係性をみていきましょう。
Terra(LUNA)の暴落で米ドルとの連動が維持できなくなったTerraUSD(UST)
引用:Trading View
USTはアルゴリズム型のステーブルコインで、
LUNAによって1UST=1ドルを調整しています。
5月10日から米ドルとの連動は剥離しUSTの価格が下がり始めると、アルゴリズムによってLUNAを発行しUSTの価格を維持する仕組みが働きます。しかしLUNAも大量に売却されたため時価総額が低下します。
LUNAの時価総額が下がり続けたため、USTの価値が保証されるか不安視されるようになりLUNAだけでなくUSTも一斉に売却されることになります。
結果的に一時約5兆円あったLUNAの時価総額は5月12日には約900億円程度まで低下し、USTの担保としての機能を果たせなくなりました。
ステーブルコインを保持する危険性
今回のTerraUSD(UST)の暴落によって、ステーブルコインは安全ではないのかという不安を感じた人も多いと思います。
しかしステーブルコインにも種類があり、法定通貨担保型や無担保型によって起こりうるリスクも異なります。今回のように、LUNAの時価総額がUSTの発行額を下回ってしまい担保としての資産価値がなくなることをカウンターパーティリスクといいます。
USTのような無担保型のステーブルコインでは価格の調整が重要であり、買い支えが足りないと価格の崩壊につながるかもしれません。
一方でTether(USDT)などの法定通貨担保型では、市場にでている全ての通貨を換金できるだけの米ドルや米国債などを保有する仕組みになっています。
このように同じステーブルコインでも様々な種類があり、仕組みやリスクに違いがあることを理解することが大切です。
まとめ
Terra(LUNA)とステーブルコインTerraUSD(UST)の崩壊をきっかけにした仮想通貨全体の暴落について解説しました。
TerraUSD(UST)はアルゴリズム型のステーブルコインでTerra(LUNA)の発行数を調整することによって価格を安定させる仕組みです。今回のTerraUSD(UST)のドル連動が剥離したことによってステーブルコイン全体の信用が問われる結果となりましたが、大切なのは許容できるリスクの範囲内で取引を行うことです。
情報を鵜吞みにせず、保有する仮想通貨の仕組みやリスクを深く理解することで安全な資産運用を心がけましょう。