スケーラビリティ問題の原因とは 対処できる仮想通貨について解説

仮想通貨を利用していると、処理速度が遅いことや取引手数料が高騰していることに悩まされている人も多いと思います。
仮想通貨の市場規模は年々加速しており、特にNFTやDefiなどの普及もあり、イーサリアムではスケーラビリティ問題が深刻になっています。
今回はスケーラビリティ問題の原因や仮想通貨ごとの対策方法などを解説します。
スケーラビリティ問題とは
仮想通貨におけるスケーラビリティ問題とは、取引をする場面が増加することで処理能力が追いつかなくなる問題のことです。
特に主要な仮想通貨であるビットコインやイーサリアムは、近年取引が増え続けており処理できないトランザクションも増加傾向にあります。
トランザクションを処理する速度が低下すると、送金が遅延することや送金自体が承認されないという事態も発生してしまいます。
また迅速な処理を要求する場合には、ガス代と呼ばれる取引手数料が高くなってしまい解決策が求められています。
ビットコインのスケーラビリティ問題と対策
ビットコインには、ブロックサイズの問題があります。
ビットコインのデータ容量であるブロックサイズは1MBという制限があります。1MBでは約400回分のデータを書き込むことができますが、世界中の取引記録を処理するためには容量が不足しているのが現状です。
ビットコインは1秒間にトランザクションを7件処理できますが、Mastercardでは1秒間に5,000件処理が可能であり決済手段として処理能力が劣っています。
このようにビットコインでは多くの利用者がいるのに関わらず、処理能力が追いついていないのが問題となっています。
サイドチェーン
ビットコインでは、サイドチェーンを活用することで直接ビットコインをアップグレードしなくても対策が可能です。
サイドチェーンとは、ビットコインのようなメインチェーンとは異なるチェーンによってトランザクションを処理することや機能を増やすことができるチェーンです。
例えば、Liquidでは仮想通貨取引所や金融機関とを繋ぎ、流動性を高めることで取引速度を上げる仕組みになっています。
またRootstockは、ビットコインにスマートコントラクト機能をつけることができ、拡張性を高めることが可能です。
ライトニングネットワーク
送金速度の改善や安価な送金手数料を実現する仕組みとしてライトニングネットワークがあります。
ライトニングネットワークでは、ペイメントチャネルという2者間でオフチェーン取引をすることで、ビットコインのブロックチェーン上で記録される回数を減らすことが可能です。そしてビットコインでの負担が減ることで取引や速度が改善されます。
ライトニングネットワークが普及することで取引手数料が安価になり、将来的には1円に満たない額での取引が可能になると言われています。
イーサリアムのスケーラビリティ問題と対策
イーサリアムはDefi、NFT、OpenSeaやMetaMaskなどのdAppと多くの分野で利用されています。
それに伴いイーサリアムの利用者は増加していて、取引の承認にかかる時間も長くなるため処理能力が遅延しています。
ネットワークへの負担が増え続けると、その分だけ取引手数料としてガス代も高くなってしまいます。
ライデンネットワーク
イーサリアムでは、ライデンネットワークというセカンドレイヤーを使い、取引の効率化を図る仕組みがあります。
セカンドレイヤーとは、イーサリアムなどのlayer1が抱える欠点を補うために開発された技術です。
ライデンネットワークは、ビットコインのライトニングネットワークと同様の仕組みを持っています。
2者間でペイメントチャネルを立ち上げて範囲内の通貨量で取引をすることができます。
またAとBがペイメントチャネルで繋がり、さらにBとCが繋がっている場合にAとCは直接ペイメントチャネルを立ち上げなくてもBを介して送金を行うことができるメリットもあります。
シャーディング
イーサリアムは大型アップデートを繰り返すことで、スケーラビリティ問題の解決を図っています。
その中でも有力な仕組みのひとつがシャーディングという技術です。
シャーディングとは、ノードを複数のシャードというグループに分割し、各シャードが割り当てられたトランザクションのみを処理することでノードの負担を減らします。
現状では1つのノードで全てのトランザクションを処理していますが、シャーディングによって1ノードが処理するトランザクションの数が減るため、取引の高速化が可能になります。
シャーディングは、2022年の大型アップデート「Merge」では実装されておらず、2023年に実現する可能性が高いと言われています。
スケーラビリティ問題に対処している仮想通貨
ビットコインやイーサリアムのスケーラビリティ問題の解決法には、layer2のような補助を目的とした仮想通貨を活用することや、ソラナなどのイーサリアムキラーと言われる仮想通貨に乗り換える方法があります。
ここではスケーラビリティ問題に対処できる仮想通貨を紹介します。
Solana(ソラナ)
ソラナは2020年に新規公開されたブロックチェーンプラットフォームです。
ソラナはイーサリアムキラーとも言われており、取引のコストやトランザクションの処理能力に問題を抱えるイーサリアムに対抗する形で登場した仮想通貨です。
名称 | Solana |
シンボル | SOL |
時価総額 | $8,569,209,181 |
時価総額ランキング | 12位(2023年2月9日時点) |
取引所 | GMOコイン・SBI VCトレード |
公式サイト | https://solana.com/ja |
独自のコンセンサスアルゴリズム Proof of History
ソラナの特徴は処理能力の高さにあります。
スケーラビリティ問題がある主要な仮想通貨のビットコインやイーサリアムと比較すると以下のような差があることが分かります。
1秒あたりのトランザクション処理能力 | 処理速度 | |
SOL | 50000 | 0.4秒 |
BTC | 6-7 | 600秒 |
ETH | 13-15 | 300秒 |
ソラナが高速の処理能力を実現させているのは、Proof of Historyという独自のコンセンサスアルゴリズムを使っているためです。
PoHは従来のPoSのシステムに加えて2つのトランザクション間の時間の経過を検証することができます。
またソラナには相互運用性(インターオペラビリティ)があり、イーサリアムとはブリッジ機能によって互いのトークンを接続することが可能になりました。そのため他のトークンと連携をすることでスケーラビリティ問題を解決できると期待をされています。
Polygon(ポリゴン)
ポリゴンはイーサリアムのスケーラビリティ問題を解決することを目的に開発されたフレームワークです。
セカンドレイヤー技術によってイーサリアムのネットワーク混雑の解消を目指していますが、他のブロックチェーンとの相互運用性も可能にしています。
名称 | Polygon |
シンボル | MATIC |
時価総額 | $11,895,214,352 |
時価総額ランキング | 10位(2023年2月9日時点) |
取引所 | bitFlyer・SBI VCトレード |
公式サイト | https://beta.polygon.technology/ |
Plasma
ポリゴンはLayer 2ソリューションと言われており、Layer 1のイーサリアムとは別の場所で処理を行うことで負担を軽減させることができます。
L2ソリューションは様々な種類がありますが、ポリゴンではPlasmaというシステムを採用しています。
Plasmaでは、イーサリアムなどのルートチェーンとは別のサイドチェーンで取引を処理して一部の情報だけをイーサリアムに送ることで高速で処理することが可能です。
しかしPlasmaは子チェーンを利用する際にハッキングをされるリスクが生じるため、安全に管理するためには常に監視を続けなればいけないというデメリットもあります。
アバランチ
アバランチは高速な処理能力で低コストを実現したdAppを構築するためのプラットフォームです。
名称 | Avalanche |
シンボル | AVAX |
時価総額 | $6,247,016,668 |
時価総額ランキング | 17位(2023年2月9日時点) |
取引所 | Binance・Coinbase |
公式サイト | https://www.avax.network/ |
他のブロックチェーンとの連携などのインターオペラビリティ問題やスケーラビリティ問題を解決できる仮想通貨である、イーサリアムキラーとしての期待も高いです。
イーサリアムとの互換性
アバランチはイーサリアムと互換性が非常に高いです。
例えば有名なウォレットのひとつでイーサリアムなどの主要な仮想通貨を取り扱っているMetaMaskもアバランチで使うことが可能です。
そのためイーサリアムのdAppをそのままアバランチで利用することも可能であるため、スケーラビリティ問題があるイーサリアムにとって代わる存在になることもできます。
まとめ
スケーラビリティ問題は、仮想通貨ごとに様々な対策が練られています。
ビットコインやイーサリアムを補助するlayer2の仮想通貨や、イーサリアムに代わる存在であるソラナやアバランチなどのlayer1の仮想通貨もあります。
またイーサリアムも大型アップデートによって処理速度の大幅な改善が期待されています。
このようにスケーラビリティ問題は、多方面で解決に向けて対策されている最中であるため、どの対策方法が最も優秀であるのか慎重に判断をして投資することが求められます。